海外のお客様とのメール文は、翻訳依頼はもちろんトライアルでも登場頻度の高い文書です。
とっつきやすいように見えて、実は独特の表現に悩まされてしまうのがメール文。そこで今回は、メールの締め言葉を訳すときの考え方をご紹介します。
まずは日本と英語圏のビジネスマナーの違いを踏まえる
日本のビジネスマナーでは、相手にお礼を言うときは、
対面 > 電話または手紙 > メール
の順に丁寧であるとされています。
そのため、メールを送信するというのはかなり略式のお礼となるため、失礼をお詫びするために、謝罪を交えた締め言葉で終わることが多いはずです。
- 本来ならお目に掛かってお礼を申し上げるべきところ、メールにて失礼致します
- 本日はお伺いできず、申し訳ございません。まずはメールにてお礼申し上げます
こういった結びの文で書き終えることが多いのではないでしょうか?
英日翻訳の際に、これを直訳してしまうと、相手はなぜ日本側が謝罪しているのか分からず混乱してしまいます。
日英翻訳では、お礼をするには相手のところに出向くのが最善だという意識を持っている人に、メールで不躾に用件が送られてきたら失礼だという印象を与えるかもしれません。
日本では訪問することが正式なお礼なので、訪問できなければ謝罪する習慣がある
英語圏では連絡手段に優先順位はなく、訪問が正式であるという決まりはない
このような、両者のビジネスマナーの違いを認識した上で、感謝の気持ちを橋渡しするような訳文作成を心がけましょう。
日英翻訳では、会う意向があるのかどうかが決め手
結びの文を訳すにあたっては、「本来ならお会いしてお礼を言いたい」という意向が文字通りあるのか、単なる儀礼なのかを確認しましょう。
送信相手が日本にいて、打ち合わせや商談について本文で言及されているような場合は、
Hope to see you soon,
のような表現で、またすぐにお会いしたいという意向を表現すると良いでしょう。
海外のお客様とは、次は展示会で会うというケースも多いものです。その場合は、
I hope to see you at the next motor show, (次のモーターショーで)
Hope to see you on the next exhibition, (次の展示会で)
といった挨拶にすることもできます。
原文が「またの機会によろしくお願いします」など、会う予定が何も決まっていないが、会う意思はあることが確認できる場合は、
Hope to see you again,
I look forward to seeing you,
のような表現にしておくと無難です。
一方で、日本と海外の間でメールだけでやりとりをしている関係の場合など、会うことが不可能な場合は、会うという表現を盛り込む必要はありません。
Thank you again,
Thank you for getting in touch,
など、Thank you(感謝)で締めるのが適切です。
メールのみで連絡を取り合い、タイムラグによって相手に不便をかけているのではないかと気になっている場合は、
Thanks in advance for your patience,
のような表現を使って、より丁寧に書くこともできます。
英日翻訳では日本のビジネスマナーに合った、へりくだった表現を使う
英日翻訳の場合、look forward toのような表現が出てきたとしても、受験英語の通り
「お会いできるのを楽しみにしています」
では子供の文通のようで、不自然です。
法人対法人のメールの場合は、日本企業どうしでやりとりする場合と同様に、ビジネスマナーに則った表現を使いましょう。
英日翻訳についても、会う意向が表現されているかどうかで表現を使い分けましょう。
【see you などで会う意向が示されている場合】
「失礼いたします」などの謝罪文を盛り込んでおいたり、メールでの挨拶は取り急ぎ送ったという意図を盛り込んだりするのがポイントです。
- 近日中に改めてお礼にお伺いいたしますが、まずはメールにて失礼いたします
- まずはメールにてお礼申し上げます。次回の展示会の際は、改めてご挨拶に伺いたく存じます
【会う意向が示されていない場合】
英語のThank you,は、日本語の「サンキュー」よりも丁寧な表現です。そのギャップを埋めるためにメールの定型文である「略儀」や「恐縮」を添えたりすると良いでしょう。
- 略儀ながらメールにてお礼申し上げます
- メールにて恐縮ですが、お礼のご連絡とさせていただきます
まとめ
メールの結び文を書くときの考え方は、
- まずは日本と英語圏のビジネスマナーの違いを踏まえる
- 日英翻訳では、会う意向があるのかどうかが決め手
- 英日翻訳では日本のビジネスマナーに合った、へりくだった表現を使う
この流れが私のおすすめです!
Eメールのトライアル課題を受験英語通りに訳していた方は、両者のビジネスマナーの違いを埋めて、うまく橋渡しができていたかどうか振り返ってみてください。