受験英文法の勉強で、例文の空欄にいろいろな単語を当てはめる「入れ替え練習」をしたり、例文を文構造を変えて同じ意味になるように書き替えたりする練習を、皆さんも経験したことがあるかもしれません。
この受験英語が得意だった方でも、日英翻訳をすると、一見合っていそうな文に修正が入って苦労するケースがあります。
今回はそんな、受験英語と翻訳の違いの一例を挙げてみたいと思います。
受験英語での”It…that構文”と”It…to構文”
受験英語では、”It…that構文”には「強調構文」の場合と「形式主語」の文があることをまず習ったはずです。ここで復習してみましょう。
強調構文と形式主語
- 次の(A)と(B)の文は、どちらが強調構文で、どちらが形式主語でしょうか?
区別がついたら、違いに気をつけて和訳してみましょう。
(A) It was my town that was attacked by typhoon.
(B) It is certain that typhoon will hit my town tonight.
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いかがでしたか?
(A)は強調構文、(B)は形式主語の文でしたね。
that以下を切り離した場合、完全な文になる、つまり主語、述語動詞、目的語か補語が揃っているものが形式主語でした。
(A)台風に襲われたのは、わたしの街でした。
(B)今晩わたしの街を台風が直撃するのは確実です。
という意味になりますね。
「これは、わたしの街が台風に襲われたという話です」
「それを確かなものとしたのは、台風がわたしの街を直撃するという予想です」
このように訳してしまうと、一見、うまく意訳したように見えますが、文構造が正しく把握できていないので、トライアルでは大きく減点されてしまいます。
ここまでは、受験英語のテクニックが役立つという話です。
では、次の学習項目はいかがでしょうか?
”It…that構文”と”It…to構文”
”It…to構文”のitも形式主語なので、”It…that構文”を”It…to構文”を比較してみよう、という授業を覚えている人もいるかもしれません。
よくある例文は、
It is natural for parents to love their children.
= It is natural that parents love their children.
(親が子供を愛するのは自然なことです)
のようなものでした。
上の例は、正しい書き換え例ですが、”It…that構文”は必ずしも機械的に”It…to構文”に書き替えることができないのです。
例えば、
It is kind of you to tell me the way.
(道を教えてくださるなんて親切です)
を、It is kind that you tell me the way.と書き替えることはできません。
人の性質や評価を表す形容詞は必ずIt…of~toという文にする必要があり、”It…that構文”で使うことができない、ということがポイントです。
”It…to構文”しか取れない形容詞の例
brave(勇敢な)
clever(賢い)
foolish(ばかな)
honest(正直な)
kind(親切な)
nice(親切な)
polite(礼儀正しい)
wise(利口な)
何でもかんでも書き換え練習していた人は、要注意です!
受験英語での”It…for~to構文”と”It…of~to構文”
受験英語では、人の性質や評価を表す形容詞で試験に出るものは、限られていました。
そのため、出る単語だけ丸暗記して、It…of~toにすればいいんだ、と機械的に処理していた人も多いのではないかと思います。
しかし翻訳で扱う単語数は、もっと多岐にわたります。
迷いやすい日英翻訳の例
2019年 上半期のできごと(Big Events in the First Half of 2019)に掲載した、以下の文に対してご質問をいただきました。
They said it was inappropriate of their employees to have posted the over-the-top prank videos.
(従業員が悪ふざけ動画を投稿したのは不適切だと言いました)
これを、
They said it was inappropriate that their employees had posted over-the-top prank videos.
と書き替えていいでしょうか?という質問です。
皆さんならどう思いますか?
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いかがでしたか?
答えは、
〇 They said it was inappropriate of their employees to have posted the over-the-top prank videos.
× They said it was inappropriate that their employees had posted over-the-top prank videos.
です。
「it」のあとの形容詞が、真偽のような客観的な描写であれば”It…that構文”にできますが、inappropriateには話し手の評価が入っているのでNGということになります。
「従業員が悪ふざけ動画を投稿したのは事実だと言いました」
They said it was true that their employees had posted over-the-top prank videos.
なら”It…that構文”で良かったということになりますね。
このように、受験英語の入れ替え、書き換え練習は、使う語彙を制限した中で行っていたから成り立っていたという事例がよくあります。
知ってるつもりの構文も、改めて見直してスキルアップに励んでくださいね。