感動ポルノ―Inspiration Porn

日本では、チャリティーをうたった24時間(じかん)テレビが夏(なつ)の名物(めいぶつ)になっています。毎年(まいとし)、たくさんの募金(ぼきん)が集(あつ)まりますが、番組(ばんぐみ)の内容(ないよう)には、英語でInspiration Pornという「感動(かんどう)ポルノ」ではないかという批判(ひはん)もあります。

 

日本語と英語で、よんでみよう!


今年(ことし)の24時間テレビでは、トライアスロンへのチャレンジもあったよね。アジア大会(たいかい)のマラソンよりも、観(み)てた人が多(おお)かったんじゃないかな。

 


The triathlon challenge was held on “24-Hour Television” this year. More people probably watched this program than the marathon race at Asian Games.

 


いくらランナーやサポーターが頑張(がんば)るとは言え、しょせんは筋書(すじが)きがあって予定調和(よていちょうわ)なんだからあざとい演出(えんしゅつ)だと、さめた目で見ている人が多いみたい。

 


Indeed the runner and supporters did their best, but they were just following the scenario as expected. Such performance is too unnatural to keep audience attention.

 


24時間テレビでは身体(しんたい)障(しょう)がい者の皆(みな)さんが、登山(とざん)やダンス、音楽(おんがく)などに挑戦(ちょうせん)するけど、障がいがあることを強調(きょうちょう)しすぎているし、感動(かんどう)を押(お)し売(う)りするような見せ方(かた)が問題(もんだい)になっているよ。

 


On “24-Hour Television,” physically challenged people try mountain climbing, dancing, playing music and so on. However, the problem is that the program focused too much on the disability to control the audience emotionally.

 


チャリティー番組(ばんぐみ)だから、ノーギャラで出演(しゅつえん)して寄付金(きふきん)も持(も)って来(く)るアーティストもいた一方(いっぽう)、企業(きぎょう)からの広告料(こうこくりょう)は募金(ぼきん)に使(つか)われていないようだし、収支報告(しゅうしほうこく)も公表(こうひょう)されないことが残念(ざんねん)だね。

 


This is the charity program. So some artists appeared without fees and donated their money. On the other hand, charge of advertising does not seem to be contributed to charity. Also, it’s disappointing that the statement of revenues and expenses is not announced.

 

もっとくわしく!

「感動ポルノ(Inspiration Porn)」という言葉は、2014年12月に亡くなったコメディアン兼ジャーナリストのStella Young(ステラ・ヤング)がオーストラリア放送協会のウェブマガジン『Ramp Up』で初めて使った言葉です。

 

これまで、さまざまな分野で消費者を煽るような刺激的な商品が「ポルノ」と呼ばれ、批判されてきました。

 

身体障がい者を報道する際、「障がいのある人=苦労している、頑張っている」という図式で単純化し、まるで障がい者を視聴者を感動させるための道具のように扱ったコンテンツとして消費させているのではないかと、自身が障がい者であるステラは問題提起をしたのです。

 

障がい者を作為的に取り扱った番組が世界的に批判を浴びる中、従来通りの番組手法を変えない24時間テレビに疑問を抱く人が増え、現在では「もはや感動しない」と言われるようになってきています。

 

演出過剰な24時間テレビとは違って、一流のパラアスリートが集うパラリンピックの場合はどうでしょうか。

 

パラアスリート報道では、障がいを殊更に強調したり、選手や家族の身の上話に多くの時間が割かれることはありませんし、タレントが大げさに応援するシーンもありません。

 

強い選手、勝った選手が注目・賞賛されるという、勝負の世界。それは、オリンピックでもパラリンピックでも違いはありません。

 

実は、24時間テレビに隠れてほとんど報道されていませんでしたが、ジャパンパラ陸上大会(2018年7月7~8日開催)では、健常者を上回る記録を出しながらリオ五輪を断念したことで有名な義足の走り幅跳び選手、ドイツのマルクス・レームが8メートル47センチをマークし、自身の持つ世界記録を更新しています。

 

他にも車いすランナーの佐藤友祈選手など、世界記録保持者が多数出場して迫力ある種目を競い、オリンピックとパラリンピックの距離を縮めていきたいと語りました。

 

私たち視聴者も、感動ポルノに踊らされずに本物の報道を見極め、応援していく姿勢が大切とだ言えるでしょう。

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