Cut & Pasteが「切断と糊付け」!? 爆笑な誤訳を防ぐためのマニュアル翻訳のコツ

普段、Wordなどを使うときにおなじみの「カット&ペースト(Cut & Paste)」。これを「切断と糊付け」と呼んだら笑っちゃいますよね。

 

一方、業務用の画像処理ソフトの場合はどうでしょうか?

画像のカットや切り抜きとすべきところを、「切断」と誤訳している例、意外と多いんです。こんなふうに、気付かないうちに、爆笑な誤訳をしてしまっているかも。

 

製品マニュアルやカタログ内の動詞を正しく訳すには、どんなことに気を付ければよいでしょうか?

 

私が実践しているマニュアル翻訳のコツを紹介したいと思います!

 

まずは、国語辞典や類語辞典で日本語の候補をチェック!

 

cutを英和辞典で調べると、「~を切る、切断する」といった意味が載っています。

切るだと幼稚っぽいな、と思って安易に「切断する」を使ってしまうと誤訳を引き起こしてしまいます。

 

実際には、「切る」の類語は1種類だけではありません。

類語例解辞典や日本語ワードネットなどのweb辞書で調べてみると、

  • 切断(鉄板を切断する)
  • 断裁(紙を断裁する)
  • 裁断(生地を裁断する)
  • 伐採(樹木を伐採する)
  • 切り取る、切り抜く
  • カット、カッティング

など、豊富な言い方が載っています。

ここから、日本語の用途に合った訳語を選べばよいというわけです。

 

英和辞典、特に受験勉強やTOEICの受験準備に使った辞書は、

受験英単語を効率よく覚えるためのものだったと割り切って、

翻訳をするときには、単語の調べ方を変えるようにしましょう!

 

 

原文の図解や実物画像を見て、形や使い方を理解!

 

先ほどのcutの例を続けると、

原文で製品の写真や図解を見ると、何をさしているかがわかります。

 

画像処理ソフトなら、カット

紙の加工ができるプリンタや印刷機なら、断裁

マルチカッターなら、切断

・・・を選択するといった感じです。

 

翻訳会社から、マニュアルやカタログの原文をPDFで支給してもらえる場合は、理解するのに手間はかかりません。

 

しかし、翻訳会社がいつでも原文を用意してくれるわけではありません。

テキストデータになった状態の英文が、Wordファイルや、専用システムのテキストエリアに添付されているといったケースも多いんです。

しかも、分業していて自分が見られるページはほんの一部、という場合は、手がかりが少なく訳しづらいものです。

 

ここで、

資料がないから推測して曖昧に訳そう、などと考えると誤訳になる確率が高いです!

 

私の場合は、

製品や機能の名前で、Google画像検索をかける

という方法で、解決しています!

 

一つ例文を見てみましょう。

Spring hinge automatically raises the yellow flag when the mail has arrived.

 

mailがあるので、てっきりメールソフトだと思って

「メールが着信すると、スプリングヒンジによって自動的に黄色いフラグが立ちます」

としてしまうと、間違いです。

 

Google検索で、

spring hinge flag mail を検索してみると――、

海外の郵便受けの画像が何枚もヒットしました!

そう、この製品の正体は、

旗付き郵便受け

だったんですね。

 

そこで、推敲後の文は、

「郵便物が届くと、バネ付蝶番によって自動的に黄色い旗が立ち上がります」

としています。

 

ソフトウェアや機械の説明文に限らず、

輸入品の雑貨や文房具などの説明文を訳すときも、実物画像を確認すると、うまく訳せますよ。

 

さて、主なテクニックを紹介してきましたが、

私のマニュアル翻訳経験から、

皆さんにぜひ覚えてほしい奥の手をさらに紹介したいと思います!

 

予測される和訳でキーワード検索をかける

 

これまで世の中に存在しなかった全くの新製品の翻訳をする、

という機会はほとんどありません。

私の場合、テックニュースで燃料電池や波力発電など、いわゆる次世代技術の英文を取り扱うことも多いですが、それでも似た事例は過去に存在します。

 

前例がほとんどない製品であっても、

メーカーがプレスリリースを書いていたり、

そのリリースをソースとしたニュースが公開されていたりと、情報源は意外とあるものです。

 

そこで、すでに存在している訳例を確認するためにも、

私は、たぶんこの製品、この機能・・・と予測した用語でキーワード検索をかける

という対策をしています!

 

ソフトウェアや周辺機器なら、

今回翻訳するのはバージョンアップ版で、

運が良ければ以前のバージョンの日本語版が読める、ということもあります。

 

もちろん、機能が変わっているので流用することはできませんが、

変わっていない部分、特に部品名称などの用語について、

前のバージョンと統一しておいたほうがユーザーも迷わないはず、

という部分は、以前の訳を採用するなどして活用しています。

 

まとめ

 

まずは、国語辞典や類語辞典で日本語の候補をチェック

原文の図解や実物画像を見て、形や使い方を理解

予測される和訳でキーワード検索をかける

 

この流れが私のおすすめです!

これで、製品の正体を誤解したまま、的外れな爆笑の誤訳をしてしまうことが防げるはずです!

 

私は、訳文評価の際は、

「この文は何について説明したものか」

という主題を間違えているときは、普通の単語の誤訳のケース以上に減点しています。

 

TOEICテストでも、

What is stated about (製品名)?

「(製品名)について何が述べられていますか。」

という設問は頻出ですよね。

 

製品の正体を知って英文を読んでいく、ということは

英語学習初心者にとっても、翻訳者をめざす人にとっても大切、ということです!

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